Kindle版で読み始め。
いつの間にダウンロードしたのかしら?と不思議に思いつつ……。
【読み始め】2023年6月13日
【読み終わり】2023年12月10日
2023年6月13日
2023年11月29日
と、同時に。言いようのない違和感も濃くなっていく。
何年か前の私なら、前述のように夢いっぱいに「私も私の周りから、こんな風に変えてみたい」と思ったことだろう。何年か前の私――性善説を前提とした世界を、心の底から信じていた頃の私なら、ね。
2023年12月5日
オープンソースのプロジェクト、という枠組みの中という限定された範囲でなら、おそらく彼女の掲げる理想とわかりやすい言葉は多くの人にとって導きの光になるんだろうなあ。これをデジタルの庭の外に持ち出したら、果たして彼女の理想通りに応用され、全世界の人々が等しく有益な「道具」として使いこなすことができるのだろうか?
彼女は「180」という数字を身長だと言う。
その身長だって、私のように150に満たない者もいれば、200を越す人だっている。彼女のようにみんながみんな、相手の目線の高さに合わせるには、降りるだけでなく昇る努力も必要だ。
世界中の人が、彼女のように、互いのバックグラウンドや思想を聴いて理解することに抵抗が無くなれば(決して互いに同調するよう求めるのでなく)、少なくとも今起きている大きな戦争は収束に向かうかもしれない。
ねえ、みんな。傾聴ってのは、ただのオウム返しじゃないんだよ?と、あまりに賢いオードリーのインタビューを読みながらとても悲しい気持になった。
2023年12月10日【読了】
天才の頭の中というのは、思考のログを辿るのが難しい――私はそう常々思ってるのだけど、本書を読み終えた今その確信を更に深めている。
オードリーは自身が天才と呼ばれることについて、本書でも再三再四大した話題にすることではないというスタンスをとっているけれど、言葉選びのセンスや比喩表現の癖を(中→日翻訳というフィルターを通しているとはいえ)鑑みるに、問題検出におけるマクロ視点とズーム視点の切り替えの速さ・脳内検索の速さ・脳内イメージのレイヤー数の多さ・等々一瞬で処理できる情報量が非凡すぎるなあという印象を受けた。
インタビューを文字起こしして、私でも読みこなせるように構成されているとはいえ、本書を並みの本と同じスピードで読みこなすのは、上記のような彼女の情報処理速度についていける人にのみ許されることではないだろうか?
私は元々ナメクジなみのスピードで読解するタイプだから、読むのに時間がかかってしまったし、彼女が離乳食レベルに噛み砕いているであろう一言一句から彼女の脳内イメージを私の脳内でできるだけ正しく再構築するコツがなかなかつかめなかった。
同時に。そんな彼女にインタビューして本書を書き上げた方、また充分に優しい日本語に書き下した翻訳担当の方、この方々も相応に情報処理速度が速くてらっしゃるのだなあと思う。
オードリーが描く未来というのは、彼女の言葉ほどの易しいミッションで成し得るものではなく、多くの理解者と賛同・協力者がいて成し得るものだろう。それこそ、インタビュアーの方や翻訳担当の方のような、才能あふれる人々のちからが何世代にもわたって必要になる。
昨今あらゆる分野で「人材不足」を嘆く声を聞いてる気がするけれど、願わくば世界中の才能がオードリーのようにオープンソース的に活躍できる環境が世界レベルで整いますように。一企業、一国家、一共同体で独占するような従来の枠組みから天才たちが開放されたら、バタフライエフェクトがあちこちで起こって、例えば、今起きている大きな争いを止める手立てが見つかるんじゃないかなと……凡愚な私は夢見てしまうのだけどな。