湊かなえ作品を並行して読むことにした。
『告白』と本書。いみじくも、吐きそうになるくらい強烈な自意識のぶつかり合いが共通テーマっぽい……。
【読み始め】2023年6月4日
【読み終わり】2023年8月27日
2023年6月4日
2023年7月15日
2023年7月18日
2023年7月19日
2023年8月27日【読了】
読み進むほどに胸が苦しくなり、ページをめくる手が重くなった。
読み終わった時には思いを言葉にしたいのに、鳩尾あたりでわだかまるばかりで、どうにも吐き出せなかった。
そもそも。
何故、本作に『カケラ』というタイトルをつけたのか?
そもそも。
一人の少女の人生を追いかける役目を、この女医――敢えて私見丸出しで言うならば「あんぽんたん女医」に担わせたのか?
最後の最後まで、登場人物の誰にも感情移入することなく、それでも襟首ひっつかまれて引きずられるように読んでしまったのは、湊節の巧みさとメインテーマの昏さによるところが大きい。
個人の美意識が「多様性」という便利なようで扱いが難しい概念によって、爆発的に裾野を広げている現代。個々の美意識は、融解して豊かに共有されるよりも、せめぎ合いお互いを喰い滅ぼそうとする場面を多く見かけるようになった気がする。その有り様をグロテスクにデフォルメして、手加減無しで見せつけるのが本作品の役割であるならば、なるほど、物語の牽引役は多少モノゴトに対して鈍感な女医が適任なのかもしれない。
そして、カケラというタイトルに立ち戻る。
この空々しさ。残酷で、無責任で。
時代に向けて放たれた一片のそれは、ゆっくり静かに、読後の心に疑問――あんたの化けの皮は、偽善の皮下脂肪は、何層あるの?――を無感情に突きつけてくる気がした。