Netflix にて鑑賞。
新刊の入稿明け、脳味噌をちょっと乱暴に洗濯する必要があったので、気になる作品をチェックしといたリストの中からコチラをセレクト。
【前】
ムロツヨシ氏の出演作は「いつの間にか」見てるんだけど、本作はハジメマシテ。
なるべく事前情報は入れずにいたのだけど、闇ムロの気配が濃ゆくて楽しみ……。
【後】
いやもう、なんていうのこれ。
想像の遥か下、地獄の釜のぐつぐつした場所の一番劣悪な谷底に叩き込まれた感じの作品だった。 ←超絶褒めてる
プロットもちょっとした小道具の使い方も、度を超してるのでは?と思えるほど研磨されてる。だから、何度でもみたい!とは思わない……いや、二度目はよっぽどじゃない限りみない。 ←ほんとに!超褒めてるからねっ!
主人公に始まり、脇を固める方々まで、お芝居が巧みな濃いぃぃぃ役者さんが勢ぞろいしてるんだけど……揃いも揃って「クズを演じる天才」なのだ。
最初っから最後まで、徹底して『クズの博覧会』みたいなお話なんだけど、そんな役者さんたちの技術力と魅力によって、映画全体がとても鮮やかな色彩と生々しい虚飾の腐臭を放っている。
ちょっと前の時代なら、こういう人々を描き出すにあたり、舞台を歌舞伎町や錦糸町辺りに据えて夜明けの蒼い光線で画面を満たすのだろうけど、それをユーチューバーというイマドキ水商売をテーマにしたことで、若い役者さんたちの肌にしっくりと馴染み、色彩がより現実に近くなって、物語全体の解像度を底上げしたのかも。
あと、これは私の気のせいかもなんだけど、金回りのイイ人はPCやタブレットなど比較的画面の大きい機材を使っていて、落ちぶれたりどん底から這い上がろうとしている人はスマホ一本で勝負してるっていう風な演出の意図?を感じたんだけど、どうだろう……。
とても現実的で、皮肉の効いた小道具の使い方。それを踏まえて、ラストシーンを思い出すといっそうこの地獄絵図全体がリアルな肌感覚で迫ってくるようで嫌だ。
物品の消費に飽きた人々は、個人のアイデンティティーを消費する。
しかもその市場心理の変化は昔よりも遥かに高速で移り変わる。
今は岸井ゆきのさん演じるYuri-chan側の人も、明日にはムロ氏演じる田母神さんの側になる。そこまで速くないよ!と信じたいけど、時代とはそういうもので、どんなに感性をアップデートしてもいつかは誰もが『旧い人』になるのだ。
怖いねえ、できることなら平和の裡に穏やかに、歳をとりたいねえぇ。