向学のために。
西洋占星術の命盤は東洋占術のそれに比べて私には相性が良い(ような気がする)。勉強を続けていても面白いことには変わりがないが、問題点も浮き彫りになってきて、あと一歩踏み込んで仲良くなりたいところを阻まれている気分だった。
昨今は西洋占星術の命盤の読み方本がアレコレ出ているし、ネット上にも簡易版とはいえそこそこに踏み込んだ内容のハウツーが出ているけれど、それらはどうも現代社会の手垢というか贅肉というか、余分な装飾が多くて反ってわかりづらい。
そこで本書を手に取った。
科学の発展によって発見された「肉眼では見えない星々」の力を借りることなく、占星術黎明期の人々が身体と体感でもって研磨してきた、高濃度エッセンスのような占星術に触れるべく。
【読み始め】2021年12月6日
【読み終わり】2023年3月26日
2021年12月26日
2023年2月21日
専門用語が頻出する段になって、原文の音をカタカナ表記にするだけの箇所が増えてくる。専門用語は日本語に訳しようがないのかもしれないと予想できるけれども、その他のところはちゃんと日本語の構文で読めるようにしようよ……と、手元でメモしつつ、自前で読みやすい日本語訳に変換しながら思った。
原本と引き比べることができないので、自分の解釈があっているかどうかは不明だけれど。差し挟まれる図録に訳文を当て嵌めていくと、なるほど実に興味深い情報が読めてくるので、なんとなく読みこなしは成功してるのかもという手応え。
2023年2月28日
現代的ホロスコープをみていると、サインの多さに辟易する時が間々ある。
占星術が世界の命運を左右する最重要ツールだったころ(それなりの『界隈』では今でもそうだとツッコまれるだろうことは予想しているけど)のホロスコープに立ち返ると、私の意見は「読み込むのは土星まででいいのでは?」となるので、その点では本書のスタンスは大いに賛同している。
船頭多くして船山に上る、ではないけれど。
手掛かりとなるサインが多ければ、それだけ読み誤りの可能性も高くなるし矛盾もはらむ。シンプルにして、きめ細やかに整合性を読み取ることこそ、伝統占星術の醍醐味なのかもね。
2023年3月26日【読了】
やっと……ついに……ぽつぽつメモをとりながら、という超低速運転というのもあったけれど、なんせ噛み砕きにくい「超・直訳」とでも呼びたくなる文体に翻弄されつつ(挫折しかけたのを奮い立たせながら)読み終えた。
著書が多い作家が優れた作家とは限らない。そして英会話が堪能(かどうかはわからないけれど)な翻訳者が適切な訳を付けられるとは限らない。私は『指輪物語』と『ロード・オブ・ザ・リング』の狭間でそれを学んだではないか……。
全体を要約してみると、なるほど、本書の目指すところは「入門書」である。
伝統占星術という看板はついているけれど、誰かを占いアドバイスする人たち或いはその界隈に足を踏み入れんと志すべき人たちが「心得ておくべき事柄」についての記述がそこかしこに散りばめられており、その点については実に興味深く読み進めた。
ただし、私なりのこの要約にたどり着くまでに、これほどまでの時間と労力を要する必然性についての是非は大いに疑問が残る。
タロットの展開と読み解きに置き換えて本書を読むと、これまた新鮮な驚きを得ることができるのではないだろうか?
基本のスプレッドに補足や派生情報として何枚もカードを引いたり、まったく意図の異なるオラクルカードデッキを引っ張り出すメソッドを「現代占術」とするならば、基本のスプレッドのみにじっくり対峙し、各ポジションごとの読み取り方を様々な角度から考察したりポジション同士の関係性から視野を広げて読み解いていくメソッドを「伝統占術」として位置づけることも可能なのでは?……とかね。
本書は占星術そのものの視点を温故知新にしてシンプルに再構築し、むしろ現代を生きる私たちにホロスコープが語りかける言葉を身近にしてくれる希望を与えてくれると思う。常々「外惑星を見ると、どうにも視界が二重写しになるようで……」と悩んでいる私にとっては、まずは土星までの惑星たちとしっかり対話してからでもOKだよ!と勇気づけてもらえたような気分でいる。