沖縄怪談の雄、小原猛さんの怪談本です。
安定の怖さ。
沖縄という土地柄が醸す、切なさや面白み。
小原さんのお話に触れれば触れるほど、沖縄への憧憬が深まります。
気ままに旅ができない身ですので、こういう疑似体験は誠に有難い限り。
【読み始め】2022年4月19日
【読み終わり】2022年5月7日
2022年4月19日
沖縄の風土は映画やドラマでしか馴染みが無い。
それなのに、方言が内包する沖縄の人々独特の「ニュアンス」が、行間から伝わってくる。耳の奥で呟く。うなじがザワザワする。
語るように書く、というのはものを書く時の基本かと私は思うのだけど、意外とそのセオリーに則ってない書物というのは多い。
けど、小原さんは映像作品で御見受けする「あの語り口」のまま、訥々と書いてくださる。言の葉の霊が、文字にも載っている感じだから、声に出して読む勇気が出ない。
2022年5月7日【読了】
途中の読書メモを残す間もなく読み終えてしまった。
読み終えるのがほんとに惜しくて、ちょびちょびと読んでいて、メモを残すタイミングも時間もたくさんあったのに。一旦停止する度に、溜息しか出てこないのだ。
あるエピソードに出てくる、怪談体験者とユタのみなさんの関係性は、沖縄独特というかガチで「あの世」を相手にしてる方々にしか吐露できない本音というか。
結局、みんな人間なのだ。
最終的に自分の命が可愛いし、自分の命を分けた子や孫が可愛い。
そこを乗り越えてこそ「親身になって相談に乗りますよ」とか「アナタがつらい時には私が寄り添いますよ」とかって堂々と看板を掲げるべきなんだろう。
私みたいに、特殊なものは視えないし聞こえないし、何やら特別な呪文も薬品も扱えない人間は、彼らからしたら楽に生きられて羨ましい存在に思えるという。
私としたら、対処法がちゃんとわかっていて、線引きができる彼らの方こそ妬ましいんだけども。
そんなないものねだり同士でも、なんとなくではあっても折り合いをつけて、日々の生活にいまだ脈々と受け継いでいる沖縄という島々の連なりに言い知れない憧れを覚えてしまうよなあ。