あらたま@メモ魔通信

くらしの一コマ、ねこ、きもの、ラーメン、読んだ本、などな日々の活動メモ。書いて、読んで、猫と暮らす。丁寧ではないし、断捨離もしてないし、OLもしてません。

【読書記録】忌み地

 

忌み地 (Noir文庫)

忌み地 (Noir文庫)

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 2023年10月の文学フリマ福岡にて、著者様の隣で出店するという御縁。

 ホラー談義に華が咲き、本書を読むにあたってKindle版が出ていることを知る。

 日中は良いのだが、夕方以降は老眼がきつい私には、文字サイズが調整できる電子書籍は大変にありがたいのだ。


【読み始め】2023年11月6日
【読み終わり】2023年11月28日

 

 

 

2023年11月8日
 文学フリマ東京37の準備、そろそろやり忘れはないだろう……というわけで、腰を落ち着けて読んでいる。
 まだ序盤だけど、とても良い手応え。丁寧に外堀を埋めるような……真綿で首を締めるような……小野不由美先生の物語の手法に近い。
 
 私はすぐにエアポケットのような「一服ポイント(=どうでもいい笑い)」を入れる手癖があるのだけど、藍上先生は怪異に対して実直で、淡々と且つ克明に情景を切り取る。
 怖さを楽しむ以上に、学ぶところがたくさんありそう。o(^-^)o ワクワクッ
 
2023年11月20日

 ちょっと閉鎖的な薫りのする土地に建つ日本家屋。そこを支配する湿気とカビと、何者かの影。舞台といい、装置といい、オーソドックスな日本の怪談を彷彿とさせるからこそ、その怖さが毛穴から染み入ろうとしてくるおぞましさたるや堪らんものがある。

 藍上先生とのお話の中で、先生が相当ディープなホラー映画マニアであることを伺ったのだけど、登場人物たちの背景や関係性をしっかり描くような人間賛歌の中にこそ怪異が生まれ育つ土壌があるタイプの作品がお好みでらっしゃるのかな?と思ったことを思い出した。
 
2023年11月28日【読了】
 主人公・結花子の恐怖が密度を増すにつれ、活字を追う目玉の速度も上がった。
 歳を経るごとに読むのが遅くなっていく私が、メモを取るのももどかしく一気に読みつくすなんて、今年の重大ニュースと言ってもいい。
 実話怪談というのは体験者視点で語られることが多く、その主観に同調することで怖さを味わい不可思議さを検証していく。イチから徹底的に創り込まれた『物語』である本書の構成も、そんな実話語りの作法に従って進むのだけど、結花子以外の人物の視点が織り込まれ後半に行くにつれその頻度と密度が深まることで、怪異の説得力と力強さが補強されどんどんオモシロ怖くなっていく。
 
 嗚呼、これぞ創作を味わう醍醐味。
 
 怪談を味わった後の何が嫌かって、語りたいことは山ほどあるのに何を書いてもネタバレになりそうで……後日、再読する自分のために、メモを残すのにも神経を使う。
 けど、これだけはちょっと、残しとこうかな。
 めちゃくちゃミスリードかもしれないけれど、結花子という名前そのものが時限式で効いてくる仕掛けになってる気がするんだ。再読する未来の自分よ、そこによーく注意して読んで。そして発見して――。