あらたま@メモ魔通信

くらしの一コマ、ねこ、きもの、ラーメン、読んだ本、などな日々の活動メモ。書いて、読んで、猫と暮らす。丁寧ではないし、断捨離もしてないし、OLもしてません。

【読書記録】獣の素顔


 文学フリマ東京でお迎えした作品。

 私の悪い癖で、手元にやってきた瞬間にはもったいながって、眺めて触ってニヤニヤ。

 久しぶりに読むハイファンタジー。しっかりじっくり腰を据えて読みたい。

 

【読み始め】2024年5月22日
【読み終わり】2024年5月24日

 

 

 
2024年5月22日

 活劇シーンのシームレスな表現に惚れ惚れ。そして、嫉妬!

 魔法で一気にドカーン、なファンタジーもいいけれど、やっぱり私は斬撃の火花が散るファンタジーが好きみたいだ。これも指輪物語の、祝福か?呪いか?

 

 物語全体のリズム、選択される単語の五感、台詞運びのナチュラルなこと……全てが私の肌感覚にピタッとあっていて、幼い頃に慣れ親しんだ東映の時代劇を楽しむかの如くわくわくと読み進む。

 小さな仕掛けが随所に効いているので、何を書き残してもネタバレしそうで怖いんだけど、なんというかこれだけは再読する未来の私のために――やっぱさ、隠密!隠密剣士は異世界だろうが架空の江戸の街だろうが、良いぞ!隠密(∩´∀`)∩

 

2024年5月24日【読了】

 初読の驚きや感動というのは一度きりだ。

 ニワトリ並みの記憶力を自負する私でさえ、やっぱり、一度読んだお話というのは脳味噌の何処かに朧げな像が残っているものである。

 

 何が言いたいかというと――好きなお話というのはその初読の感動をずーーっと味わっていたいし、なんならずーーーーーーっと終わらないでいてくれたらいいのに!と、この世の理に反した願いだとわかっちゃいるのに、願わずにはいられないのだ。

 ※ほらね、読み始めたら、面白いお話はすぐに終っちゃうんだよ……という顔をしながら書いている。

 

 ポエミィな魔法詠唱の流行が落ち着き、宙に浮かぶステータス画面をポチポチやるのが当たり前になりつつある現代のファンタジー創作界隈において、血沸き肉躍る斬撃のハイファンタジーを新しく書き下ろしてくださる作家様というのは、大変に、非常に、めちゃくちゃ尊い存在である(私にとって)。

 しかも、ちゃんと陰謀が渦巻いていて、訳アリ剣士が心身に受けた傷を卑下することなく無駄に自慢することなく旅をし、誰もが傷つく可能性のあるリアルな中世騎士時代に近い世界で、生き延びるため或いは友の名誉のために剣を振るう物語を無骨に描いてくださる作家様というのは、もう来世は解脱決定である(私にとって)。

 

 私がファンタジーに求めるものって、現代日本よりも遥かに危険で弱肉強食あたりまえな世界で懸命に生きる人々の力強さだったり、そういう世界に生きるがゆえの倫理観の中でいかに普遍的な価値を見出すか?という自分への問いだったりする。

 本書を読んで感じたドキドキは、その再発見だったんだろうなあ。

 

 私は映画『紅の豚』の「カッコイイとは、こういうことさ」ていうキャッチコピーを愛してやまないんだけど、本書のボリュームの中にカッコイイ騎士道物語の空気感を閉じ込めきってくださった作者様に、こっそりこのキャッチコピーを贈って感謝の気持ちを伝えたい。