文学フリマ東京でお迎えした作品。
物語世界から装丁・カバーデザインに至るまで、隙なく、凝りに凝ったハードボイルド小説……なのだけど、登場人物のイメージイラストがポップで可愛い!
設定をより深く味わえる、本書のガイドブック!的一冊『あなたは』も追加購入したので、併せて読み進めていく。
※書影は私が独自に撮影したものです。作者様や発売元様よりご要請ありましたら、画像の削除又は差し替えることがあります。
【読み始め】2024年2月6日
【読み終わり】2024年6月6日
2024年4月27日
学校をサボって見たバディもののテレビ映画。連続ドラマだっけな?
友達になると面倒そうなんだけど妙にかっこいいアウトローがいて、せりふ回しに艶があって、こういう「ここではない何処か」に憧れた時期が私にもあったぜ……と、一気に時間を巻き戻して『あの頃』に連れ出してくれる細やかな仕掛けがたっぷり。
2024年5月22日
いなほ嬢のおつかいエピソードを読み、ほこほこ気分になった直後『あなたは』収録の雑営団地についての章を読んだ。
切り貼り屋の蛇蝎氏……い、イケメン!!
2024年6月6日【読了】
連載モノを執筆中*1において、本書に詰め込まれた世界観はあまりに吸引力があり、しばしば作風変異が起きた(起きた!)ため書き直しが必要になる箇所多々あったため、やむなく読むのを中断すること数回。
この度、ようやく執筆中の原稿の七割がたが整い、もう引っ張られることもないでしょう!と意気揚々、本書を携え喫茶店に籠って残りを一気に読み終えてきた。
東京によく似た街・東興の、清濁併せ吞むいかがわしさがチャームポイントな通称『ガラ通り』に暮らす人々。
彼らの日常に図々しくもぬるりと入り込む怪事件の数々が描かれていると思いきや、各短編に登場する人々は揃いも揃って「そういうモノゴト」さえも自らの足元(蹄だったり、吸盤付きの指だったり……)にねじ伏せ、しれっと逞しく『日常』生きており、本書は淡々とそんな彼や彼女の『日常』を描き写しているに過ぎない(フィクションだけど)。
外から見たら、とても常人が住まう場所ではない……のかもしれない。
けれどそんな場所での暮らしこそが、彼らの通常運転なのであり、日々を生き抜くことにこそ生きる意味を見出している。
特別な事件も、世界の根幹を揺るがす次元の狭間の出現も、巨大怪獣による街の蹂躙もなく、あたかも私の生きている街の、国道を真っ直ぐ行った先に『ガラ通り』があると錯覚してしまいそうになるけれど、そこは紛れもなくウッカリいけない憧れを抱いてしまう異界であり、辿り着くことをちゃんと向こう側から拒んでくる。
ああ、もう!こんなお話、クレイジージャーニー大好きっ子((丸山ゴンザレスさん回は毎度ゾクゾクします(;^ω^)))な私が、心揺さぶられないわけがないじゃないか!!
細く長く生き延びたい私は、ちょっと危険な非日常に憧れはあっても、それを求めて地球の裏側へ行く資金も根性もない。
本書を読むという体験は、まさに『きっと一生叶わないだろう社会科見学』の疑似体験をサラッと可能にしてくれたわけで、読んでよかったとつくづく思うし、今後これ以上の刺激を脳味噌が欲するようになる可能性がゼロではないのが恐ろしい。
ドキドキ体験は、用法用量にシビアになって、ほどほどのところで止めとこう。
*1:【木曜日のチョイ怖】シリーズ第六話 『いま、なんどきだい』