あらたま@メモ魔通信

くらしの一コマ、ねこ、きもの、ラーメン、読んだ本、などな日々の活動メモ。書いて、読んで、猫と暮らす。丁寧ではないし、断捨離もしてないし、OLもしてません。

【読書記録】らじおがたりもっと

文学フリマ東京でお迎えしました


 文学フリマ東京でお迎えした作品。

 以前に読んだ『らじおがたり』の続編。小気味良い文体で、さまざまなジャンルの掌編が紡ぎ出される本シリーズは、まさに贅沢の極みと呼べる一冊じゃないかしら?

 ※書影は私が独自に撮影したものです。作者様や発売元様よりご要請ありましたら、画像の削除又は差し替えることがあります。


【読み始め】2024年1月17日
【読み終わり】2024年1月21日

 

 

 
2024年1月17日

 甘酸っぱい雰囲気を醸す一本目のお話から始まったと思うと、SF風味サスペンス、現代ファンタジー、ブラックユーモア全開もの……と、今回もまた多種多様なお話が次々に飛び出す。

 本を読むという行為は、ページを開いたその瞬間に舞台の幕が開き、その場所が特等席になるという、めちゃくちゃお得なエンターテインメントだ。この快適な椅子にずっと座ってたい……帰るのめんどくせーんだよなあ……とまあ、本書を読み始めると必然的に自堕落スイッチがonになるのだが、似たような気持ちになる場所があったはずなんだよなあとよくよく思い出せば、それは初笑い寄席で行った鈴本演芸場だった。

 外は真冬の寒さ厳しい夜だ。他のお客さんの笑いさざめきも心地よい温かな演芸場で、入れ代わり立ち代わり話芸や色物で楽しませてもらって、嗚呼腹減った……けど、このまま笑い疲れて寝ちゃいたいな……お泊りプランとかないのかな?帰るのめんどくせー……となっちゃう。

 そんな寄席と同等の本書、つまりは極上のエンタメ宝箱ってことだよね。

 

2024年1月21日【読了】

 一冊目からトーンダウンすることなく、多彩な作品の数々で最後までわくわく……で読み終えられた。ありがとうございますm(__)m

 

 二冊目を読んでみて、さらに確信を固くしたことがある。

 それは、作者のバックグラウンドと作家性の「豊かさ」だ。

 真摯なSFファンとお見受けする硬質な筆致には、ただただ科学的知識に耽溺するだけではないユーモアや愛や世の中に対する皮肉が程よく乗っていて、初読者や最先端科学に詳しくない読者にも広く門戸を開けて待っていてくれるような温かさが、全ての作品に「作風」としてしっかりと反映されていると思う。

 私の拙い人生経験において、このような書き手は実はあまり多くを知らない。

 博覧強記ゆえに読者を置いてけぼりにする書き手とそれを目指す書き手は今この瞬間もたくさんいる。哲学や主義主張を織り交ぜるのに必死なあまり、登場人物の個性が希薄な物語や、いっそ物語を排してしまったのかしら?と思われる日記なのか私小説なのか判別不明なお話もある中、ただひたすらに『次はどんな風に読者をびっくりさせようか?』ということにひたすら注力する本書のような、安心して手に取れる作品というのは今では古典派と呼ばれてしまうのだろうか?

 

 エッセイや体験談を集めた作品が全盛の昨今。作り話が実話に追いつけないのだろうな、という諦めの中でそれでもなお物語を『創作』ことにこだわる人たちが居る。

 その人たちが日々、楽しいものを楽しみ、笑い、悲しみを悲しみとして味わって、宇宙の仕組みと向き合いながら、健やかに文字を書き連ねていけますように……。

 本書を読み終える時に、またこの素敵な時間が……三冊目と出逢えますようにと願わずにはいられなかった。

 

 最後に、特に「大好きだ!」と思ったお話を、厳選して三つ挙げておくことにする。

 ・生きるリズム……オカルトについて、研究というほど真面目に探究してないけど大好きだよという私だが、日頃幽霊について思うことに「可」のハンコをもらったような気がした作品

 ・憧れの庭……作品中に出てくる映画、観てみたい!

 ・熟考の成果……ブラックユーモアとはこういうことさ、と洒落のわからん人々に勧めて自己啓発を促したいっっ(´;ω;`)ウゥゥ