文庫版は単行本版には無い<検死編>が収録されている。
上巻を読んだ肌感覚が新鮮なうちに読み終えたい。
【読み始め】2023年2月15日
【読み終わり】2023年2月24日
2023年2月15日
なるべくソフトランディングを心掛けているのだろうなあという筆者の優しさがじわじわと伝わってくる。のだけども……出版不況への焦り・苛立ちがぐつぐつと煮詰められていることには変わりなく、むしろその煮汁の濃度は濃くなっていて、ある意味「手に汗握る」レポートといった様相。
単行本で一気に読み進めていたら、この辺りでギブアップしてたかもしれないなあ。
2023年2月21日
出版流通と書籍そのものを取り巻く環境は、書籍という媒体が如何様に変貌を遂げようとも、人間がそれで「商売してでっかく儲けよう」と追及する限り閉塞感を増して緩やかに衰退していくのかもしれない。少なくとも日本という国の枠組みの中では。
――と、検死編が始まって間もないというのにどんより気分を味わってしまう。
僅かな希望を無理矢理見出そうとするならば、シェア型書店や私が目指そうとする小さな出版販売業は細やかながら確実な風穴となり得るかもしれない。再販制度や図書館・レンタル店といった枠組みからは外れた場所にある製造と流通のカタチだ。
その希望が大きく育つことを祈りつつ、続きを読んでみる。
2023年2月24日【読了】
このルポルタージュが文庫版に追加された<検死編>で完結した時点での出版不況をめぐる様相は良くなるどころか、ますます混迷を極めているような気がしている。
電子出版や新古書店の発展は目覚ましいけれど、そこにはこれまでになかった『副業』を絡めた新手の出版ビジネスが台頭してきて、読みたい本に辿り着きたくとも辿り着けない読者は増えている実感がある(あくまでも客目線だけれど)。
著者が御存命であったなら、今の状況をなんと表現するだろう?
私自身、シェア型書店の棚主になるという御縁を繋がせていただいたり、個人事業の域ではあるけれど(いずれはひとり出版社!)も書籍の制作・販売の界隈の隅っこの方に暮らすようになって、客側からでは見えてなかった景色がほんの少しではあるけれど垣間見る機会に遭遇するようになった。
私の居る「場所」が、恵まれているからかもしれないけれど。という但し書き付ではあるが、この国の『本をこよなく愛する読者を自認する人々』は未だ大勢いるし、そのような趣味嗜好の若い方々もスクスクと育っているという手応えがある。
だから、本は決して死滅したりしない。紙の本も、生き残っていくだろう。
娯楽=タダで享受できるものという図式がデフォルト設定になっている人々が増えゆく昨今では、紙の本はますます高価なものとして肩身の狭い思いをするかもしれない。
また、初版の頃の文化情勢が「今の価値観と合わない」という理由だけで、改変したり絶版したりという『黒歴史は塗りつぶす以外にない』とする考えの向きとの闘いも、書物を読み伝えていくという点においては避けて通れない事由になると思う。
――だれが「本」を殺すのか?
この問いは恐らく、時代ごとに答えが変わる。