長期のシリーズ化を見込んだのかな、盛りこみすぎたな……というのが、この本を読んでいる間中ずっと考えていたこと。
なので、母子の情をえぐるエピソードが一番の盛り上がりどころなのだけど、このエピソードを第一話で展開するのはちょっともったいないなと思えました。もう少し話が進んで何巻かあとのほうが、個々のキャラクタ描写ももっと掘り下げられていただろうし、グッと深みも増すんじゃないかなあと思えたのでなにやら「もったいないな」と感じたのでした。
人間もアヤカシもなんだかわからない者どもも、いとおしいキャラクタがたくさん出てきます。出てくるけれど、あまりにテンポ良く登場するので、私が仲良くなりたいなあと思った瞬間にはパッと舞台袖にはけてしまう。とても寂しいです。
読むのが遅い私でも、数時間で読み終えられてしまう本。だから、さらっとおさらい読みもできたのですが、やっぱりみんなパッと出てパッと退場を繰り返すので、どうにもならない寂しさが募りました。
とにかく「のどごしの良い」本を読みたいとか、文庫本というものを読んでみたいなと思っている中高生には、このさじ加減がちょうど良いのかもしれません。ただ、私が求めていた方向とは違っていたのです。
もうちょっとゆっくり、ほっこり。リラックスした姿勢でお茶でも飲みながら。